企業のSNSは、人柄が見えると強くなる。
そう聞いて、担当者の素を出そうとしたものの、手が止まる。
砕けすぎると、ふざけて見えないだろうか。
かといって硬すぎると、誰の心にも残らない。
この「どこまで出していいのか」という線引きに、多くの担当者が悩んでいます。
今回は、企業アカウントにちょうどいい距離感の作り方を考えます。
そもそも、なぜ「素」を出すと強いのか
まず、人柄を出すことの意味を整理します。
人は、人に心を動かされます。
完璧に整えられた宣伝文より、その裏にいる人の表情に惹かれるのです。
中の人の存在が感じられるアカウントは、見ている側との距離が縮まります。
読み手が親しみを覚え、応援したくなる。
その積み重ねが、信頼へと育っていきます。
だからこそ、素を見せることには価値があります。
ただし、これは何でもさらけ出せばいい、という話ではありません。
出すべき素と、出さなくていい素がある。
その違いを理解することが、最初の一歩になります。
出していいのは「仕事に向き合う姿」
では、どんな素を出せばいいのか。
軸になるのは、仕事に向き合う姿です。
商品にどんな想いを込めているか。
その背景にある作り手のこだわりが伝わると、見ている人の信頼は深まっていきます。
日々の業務で大切にしていることを言葉にするだけでも、人柄はにじみ出ます。
たとえば、うまくいかなかった失敗談も、誠実に語れば好感を生みます。
完璧に見せようとするより、試行錯誤している姿のほうが、見ている人の心に届きます。
仕事への姿勢から見える人柄。これが、安心して出していい素です。
出さなくていいのは「ただの私生活」
一方で、慎重になったほうがいい領域もあります。
仕事と関係のない、ただの私生活です。
担当者が昨日どこで飲んだか、休日に何を食べたか。
こうした投稿は、フォロワーにとって価値があるとは限りません。
もちろん、私生活がすべて駄目なわけではありません。
人柄が伝わり、見ている人が楽しめるなら意味があります。
問題は、目的を見失った私生活の垂れ流しです。
これは中の人を出しているのではなく、ただ業務時間に個人的なつぶやきをしているだけになってしまいます。
その線引きは、常に意識しておきたいところです。
「会社の看板」を背負っている自覚を持つ
素を出すうえで、忘れてはいけない前提があります。
中の人は、個人であると同時に、会社の看板を背負っているということです。
その投稿は、担当者個人の言葉であると同時に、会社の発言として受け取られます。
軽い冗談のつもりでも、会社の姿勢として見られるのです。
特に、誰かを傷つけかねない話題や、意見が分かれる話題には注意がいります。
素を出すことと、無防備になることは違います。
看板を背負っている自覚があれば、出していい素と、控えるべき言葉の区別が、自然とついてきます。
迷ったら「相手の顔」を思い浮かべる
それでも、どこまで出すか迷う場面は出てきます。
そんなときに役立つ、シンプルな基準があります。
この投稿を、目の前のお客様に直接言えるか。
そう自分に問いかけてみることです。
実際にお客様と向き合って話すとき、人は自然と言葉を選びます。
砕けすぎず、硬すぎず、ちょうどいい距離で話すはずです。
その感覚を、そのままSNSに持ち込めばいい。
画面の向こうには、生身のお客様がいます。
その顔を思い浮かべれば、ちょうどいい素の出し方は、おのずと見えてきます。
正解は「自社らしさ」の中にある
ここまで線引きを見てきましたが、唯一の正解はありません。
許される砕け具合は、会社の雰囲気や扱う商品によって変わるからです。
堅実さが信頼につながる業種もあれば、親しみやすさが武器になる業種もあります。
他社がうまくやっている距離感が、自社に合うとは限りません。
大切なのは、自社らしさからはみ出さないことです。
ふだんお客様に接するときのトーン。
それが、SNSでの素の出し方の、いちばん確かな手本になります。
背伸びも、卑下もいりません。
自社らしい温度のまま発信することが、結局はいちばん長く愛される道なのです。

